酒井氏によると、「2000年代初頭の「自分らしく」は(略)きらきらしい存在から目を逸らすための言葉であったのに対して、今の「自分らしく」からは(略)被害者意識のようなものが漂う気が。(略)今の若者は、生まれた時から「そのままでいい」と言われているが故に、「自分の」輪郭がほんわかしたまま大きくなり、だからこそ、自分の芯の部分をみつけづらいのではないか。」と書かれています(P.49-51)。

「自分らしく」するために、何でも思ったとおりにしても良いよと言われても戸惑ってしまう。「これって自分らしいの?」と思ってしまうのは、比較するものがないからでしょう。自分らしさを妨げてはいけないので、「これまではね」とか「例えばね」ということを先輩職員が躊躇して言わない、ということも聞きますが、実はその反対かもしれません。(2025.10.6.)

(参考・引用図書:『うまれることば、しぬことば』酒井順子 集英社文庫 2025年)