國分氏は「意見が飛び交う中で、実は忘れられている営みがあるのではないか。それは問うことであり、考えることです。意見を述べることと、問うたり考えたりすることは別です。(略)ある事象について反対か賛成かの態度表明をすることが、それ以上ものを考えるのを妨げてしまう場合がしばしばあります」(P.35)と指摘しています。

「それ以上ものを考えるのを妨げてしまう」とは、自分の意見の真偽の確認をするわけでもなく精度を高めようとするものでもなく、単に他者の意見に対して優っているということにこだわっている、という理解をすることができます。そうなると、それは議論ではなくなり、相手の弱点を探ろうとするので、重箱の隅をつつくような質問に陥ることになりやすいでしょう。それでは、高め合うような議論にはなかなかならないでしょう。(2025.12.22.)

(参考・引用図書:『目的への抵抗』國分功一郎 新潮新書991 2023年)