平田氏は、「対話などせず、一人一人の多様性に目をつぶった方が、短期的に成果を上げやすいことは歴史が証明している」(※1)、「一方的に対話を拒否する者が増え、おかしいと皆が感じなくなれば自由と民主主義は機能不全に陥ってしまう」(※1)と述べています。

斎藤氏によるインタビューのなかで、ブレイディみかこ氏は、「ヒエラルキーのなかで働くエンパシーって、とても危ういものだと思うんです。(略)ケアが職業なので、エンパシー能力が強い。(略)酷い扱いをされても、「彼らにも事情がある」と我慢して耐えてしまう。(略)結果的に、搾取される構造につながる。つまり、エンパシーがヒエラルキーに巻き込まれると、共感そのものが曇ってしまう」(※2P.292-293)と述べています。

成果が上がっていくと相手に言いづらく(批判しにくく)なります。「彼らにも事情があると我慢して耐える」、つまり「おかしいと感じなくなれば」、自由と民主主義は機能不全に陥り、搾取の構造もそのままということになります。そうならないためには、成果が上がっているとしても、「おかしいと思うことはおかしいと言える」という環境を保ち続ける努力が欠かせません。(2026.2.16.)

(参考・引用図書※1:『深まる分断。どう生きるべきか 劇作家・平田オリザさんに聞く』 2026年1月1日付中国新聞 6面)

(参考・引用図書※2:『哲学史入門Ⅳ』 斎藤哲也(編) NHK出版新書750 2025年)