はじめにで、「被爆80年(略)日本政府は(略)原爆投下後に降った放射性降下物による内部被爆を切り捨ててきた」(P.2)と書いています。
1980年に原爆被爆者対策基本問題懇談会(基本懇)が、被爆地域の拡大は「科学的、合理的な根拠のある場合に限定」すべきだとした意見報告を提出して以降、国は被爆地域を広げることなく今に至る」(P.14)が、黒い雨訴訟で2021年7月の広島高裁判決では、「原爆放射線により「健康被害が生ずる可能性」があれば「被爆者」だと指摘。健康影響が「実際にあったことやその程度までを問うものではない」(P.39)としました。原爆に係る裁判のなかで、「国側も実は、「被曝影響がない」とは言っていない。「有意差がない」と言っているだけ」(P.56)のようです。苦しい言い訳のようにも聞こえます。
放射性物質にはさまざまな種類があり、その特性もさまざまなので、検査方法・計算方法が違えば、結果も大きく変わってくるでしょう。「広島も、長崎も、ビキニ船員も、福島も、ひとりひとりが実際に浴びた線量は分かっていない。あくまでも、机上で検討されたモデル」(P.62)をもとに推計されているものに過ぎないようです。根拠として数字が示されると、それが絶対的のように思えますが、疑いもなく信じるのではなく、その数値がどのように導き出されたかもみないと妥当性は問えないはずです。
星正治・広島大学名誉教授は「放射性微粒子は核をめぐる被害の本質なのに、十分な対処も援助も、影響の研究もされてきませんでした。受けてきた「被害」をそうと認められないまま、放置されているヒバクシャがいるかもしれない」(P.75)と述べているようです。
原爆を投下された国が優先するのは、「加害した側が一方的に評価」(P.76)したものではなく、被爆した人の側に立った援助ではないでしょうか。(2026.10.26.)
(参考・引用図書:『被ばく「封じ込め」の正体-広島・長崎・ビキニ・福島の声から』 小山 美砂・笹島 康仁・白石 草・田井中 雅人・古川 恵子(著) 岩波ブックレット1114 2025年)

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